常に技術の吸収に貪欲だった先輩

私は現在40歳の男性です。ファクトリーオートメーション関連のシステムエンジニアをやっています。今勤めている会社には32歳のときに中途入社しました。業務内容は、画像処理用の装置とソフトウェアを開発して様々なお客様に納品するのですが、私自身は画像処理のアルゴリズムやソフトウェアの開発を行っていました。

私が入社した時は画像処理については全くの素人でしたが、2年上の先輩社員にOJTで基本的なノウハウから応用技術まで様々なことを学びました。仮にこの先輩社員をT氏と呼びますが、とにかく勉強熱心で新しい技術の吸収に貪欲な人でした。次々と新しい製品のシステムを考案しては企画書を出したり、社内の勉強会にも積極的に催してくれたり、人の面倒見も良く、私もT氏の下で色々な技術を身に着けていきました。

一度T氏のお宅にお邪魔したことがあるのですが、書斎には会社の設備と同等のコンピュータ類が並んでいて、見えないところでもかなり努力されているのだと感服しました。ところがある日のこと、突然T氏から会社を辞めるということを打ち明けられました。私はかなり動揺してしまいましたが仕方のないことだと思い、転職先などは気を使ってあえて聞きませんでした。

それから約2年ほど経った頃、私も会社の業務に慣れ後輩を引っ張っていく立場になっていたのですが、T氏から連絡があって飲みながら話をしようということになりました。久しぶりに会ったT氏は以前にも増してエネルギッシュな印象でしたが、貰った名刺を見てびっくりしてしまいました。肩書が会社の副社長となっていたのです。エンジニアとして有能であるのに、技術開発の傍ら経営にまで乗り出していたのでした。最近の仕事の状況や景気のこと、前に勤めていた会社での思い出話などに花が咲きましたが、最後にT氏の会社に誘われました。

いわゆるヘッドハンティングというものでしたが、突然であったためその日は即答を避けました。給料やその他条件など、現在の会社を多少上回っていて、それから数日の間正直言ってかなり心が揺れ動きました。しかし、もったいないなと思いつつもそのオファーを断ってしまいました。理由は現在勤めている会社において、私自身もそれなりに責任のある立場となっておりプロジェクトを引っ張っていかなければならなかったことですが、もっと大きな理由がありました。

それはT氏の下にいるといつまで経ってもT氏を越えることが出来ず、成長がなくなってしまう気がしたからです。ライバルがいるからこそ頑張っていける、そんな気がしました。

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